パワーエックス工場内設置作品

調整力

電気と蓄電の可視化

我々が当たり前に使っている電力は数多くの発電所で発電された電気を日本中に張り巡らされた送電線で供給されています。その様々な発電所の中には、自然由来の太陽光や風力もあり、その時の天候によって発電量や発電の時間も変わります。
蓄電池は社会が必要な電力を供給が過剰になる瞬間、供給が足りない瞬間、を調整するための装置です。

この作品は、電力の安定供給とその裏にいる発電所を体感できます。
それぞれのライトは日本中にある発電所であり、発電のタイミングが違うにもかかわらず、地面に投射される。
光は安定電力を示しています。1つの発電所が発電を止めても、地面は暗くならず、その間を調整していく蓄電池を持てば、日本全国により多くの自然由来の再生可能エネルギーが接続可能になります。

アーティストインタビュー

SAI(サイ)

SAIは、本芸術祭における展示制作のためアノニマスの産業芸術家集団として発足した。産業と芸術の掛け合わせから新たな観光的価値の創出を目指した瀬戸内産業芸術祭のように、異業種のスキルを有する構成員同士のシナジーを生み出すことを第一義に掲げる。今後も本芸術祭を活動の中心に据え、構成員は固定せず作品に応じて入れ替えを行う。活動国、キャリア等の属性は一切問わない。

パワーエックス社が有するファクトリー(パワーベース)にて発表した作品「調整力」は、電力の仕組みを可視化したアート作品である。この電力すなわち、エネルギーの概念を作品に実装するにあたり、SAIは複数のリサーチを行った。いくつもの興味深い事象に行き当たったが、特筆すべきは電力供給と需要の関係性である。一言で言えば、動的平衡(絶えず変化しながらも全体的なバランスが取れている状態を指す)の面白さがある。電力は滞りなく極めて安定した形で提供され、我々は無意識的に消費している。ただし電力は全て同時同量であり、発電と消費が常時均等でなければならず、電力が余っても足りなくても停電を引き起こしてしまうことをご存知だろうか。現在、世の中の電力調整は火力発電所などが運転を制御することによって実現されているが、近い将来、国産エネルギーである再生可能エネルギーや原子力発電所による電力構成へと転換していくであろう。それに伴い、将来蓄電池は火力発電が長年担ってきた役割を引き継ぐことになる。蓄電池を製造する同社で作品を作る以上、こうしたエネルギーにまつわる責任をしっかり理解し、国内の電力の安定供給に貢献する責務を作品のコンセプトに据える必要性があった。

この様な背景で、私はエネルギーに対する敬意及びそれに類似する感慨を触発させる作品制作の意向を固めていった。まさに「エネルギーの未来」の可視化である。奇しくもこの構想は、パワーエックス社が行う、再生可能エネルギーを蓄電池へと変換する基幹事業と抽象的なレイヤーで符合するものだった。

この作品は、無数の点灯を続ける電球により、安定した光のプールが映し出される。黄色い光はエネルギーをイメージしており、電球が点灯しているにもかかわらず、光のプールは滞りなく安定している。これは、蓄電池がもたらす電力網に対する調整力そのものでもあり、無数の発電所に対して電気を充放電することで電力を世の中に滞りなく安定供給をする未来の日本の電力網を体現している。光のプールはドット状の光源から成り、144基のスポットライトによって構成される。MOD(システムデータを改造するプログラムあるいはファイルの総称)を組み込まれた各電球の光は、安定的に光を発するもの、明滅するもの、揺らぎをもたらすもの、今にも消え入りそうなもの、など異なる様相を呈する。この仕掛けにより鑑賞者は、手や体で光を感じることで、具現化したエネルギーを形態や色彩として認識する。光の絵画の内部に入り自身の投影を確かめ、エネルギーによって生かされる個体としての輪郭、存在感を感じ取る方もいるだろう。アートによって可視化された調整力に合わせて、鑑賞者それぞれが自由な解釈で楽しんで頂きたい。

SAI(サイ)

瀬戸産業コミュニティープロデュースする、このイベントだけの特別アートユニット。参加企業に合わせたクリエイターたちを招集し、新たなシナジーを生み出します。パワーエックスの展示では目に見えない電気を可視化する作品を特別展示いたします。

目線が変わると、
景色が変わる。
新しい気づきを、探す旅。

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